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事件の真相は捜査当局で作られる、和歌山カレー事件



真実は人の数だけあるんですよ、でも事実は一つです|
漫画『ミステリと言う勿れ』の主人公の発言ですが、
この1巻は、出来が良いですね。


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小学生を含む4人の死者を出した。
和歌山市で1998年に起きたカレー毒物混入事件が、
今日25日で事件から23年を迎えます。

殺人罪などで死刑判決が確定した林真須美死刑囚(60)が今年5月、
無罪を求めて2度目の再審請求を和歌山地裁に申し立てています。
「時間がない」と涙ながらに弁護士に訴えたそうです。

この事件は、動機や物証含め本当に疑問の多い事件でしたので、
警察・検察は、この事件におけるアナザーストーリー
の成立可能性をどれだけ潰せたのか、非常に気持ち悪さの残るものでした。


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捜査当局自らの見立て・ストーリーに
都合の良い証拠や証言だけをつぎはぎで集めた、警察が考えた真実ではなく、
本当に事実のみを積み上げた捜査による事実認定が行えていたのだろうかという
疑問も生じるものでした。

もしも、真犯人がまだ野放しになっているのだとしたら、
遺族は浮かばれません。

というわけで、今回は、特にその疑問点を紹介させてください。




最高裁の判決文の問題点

最高裁の判決文は、「合理的な疑いを差し挟む余地」だらけなのである。
京都大学大学院の河合潤教授の再鑑定によって、カレーに混入された亜ヒ酸と、
林宅から発見された亜ヒ酸は「同一ではない」ということが2012年証明・公表され、
さらには目撃証言にも疑問が生じている状況となっている。

なぜ林真須美は、動機不明、自白なし、状況証拠のみで有罪、死刑とされてしまったのだろうか。
報じられていないカレー事件の裏側を見てみたい。





元裁判官の生田弁護士は、「事件当時からの経緯や裁判関係資料を調べ直したとし、
林死刑囚の刑事裁判では、被害者の死因を示す死体検案書などが証拠として提出されず、
状況証拠による事実認定に争点が集中したと指摘。
「ヒ素による死亡を合理的な疑いを超えて証明する証拠が全くない。大欠陥の判決」と述べている。






過去の未解決の毒殺事件の存在

ご記憶の方もおられると思うが、この事件は発生当初
青酸カレー事件」と呼ばれていた。
和歌山県警の科捜研が、犠牲者の体内や被害者の吐しゃ物、
食べ残しのカレーなどから、青酸化合物を検出したと発表したからである。

カレー事件が起こる3年ほど前に林真須美がこの地域に引っ越してきたのだが、
林真須美が引っ越してくる以前に、
近隣の複数の飼い犬が青酸化合物によって毒殺されるという事件が起きていた。
犯人はいまだに捕まっていない。

詳細は、以下。











ヒ素発見の経緯と、成分の違いの謎

事件から2カ月半後の10月4日、真須美は殺人未遂と詐欺と詐欺未遂容疑でで逮捕。
その日から、徹底した家宅捜索が行われたが、84人の捜査員が
1階、2階、外周の3班に分かれて行い、
1日目は約11時間、2日目は約8時間、3日目は約9時間を費やして
ようやく4日目に、台所の物入れという目につきやすい場所で、
台所シンク下の物入れから、黒の油性ペンで「白アリ薬剤」と
書かれたプラスティック容器が見つかったという。

結局、この容器に付着していたヒ素と、
事件現場に残されていた紙コップに付着していたヒ素、
そしてカレー鍋に残留していたヒ素が「同一である」という鑑定結果が示され、
真須美が自宅にあったヒ素を紙コップに移し入れて運び、
カレー鍋に混入したということが裏付けられたのだが。

しかし、真須美の死刑確定後に、京都大学大学院の河合潤教授が行なった再鑑定によれば、
紙コップに付着していたヒ素は75%(亜ヒ酸濃度に換算すると99%)と高濃度であるのに対し、
プラスティック容器に付着していたヒ素は不純物が多く、
紙コップのヒ素の3分の1から7分の1程度の濃度にすぎなかった。

つまり、真須美が台所にあったヒ素をカレー鍋に混入したという筋書きは、成り立たない。
弁護団は、再審請求を行ない、河合教授の鑑定書も提出したのだが、
2017年3月、和歌山地裁は棄却し、大阪高裁(樋口裕晃裁判長)でも、
2020年3月24日、林死刑囚側の即時抗告を棄却し、再審を認めない決定をしています。

決定理由で樋口裁判長は、紙コップ内のヒ素は粉末として付着している程度で、
鑑定のため科学警察研究所に送られるまでに検査などで試薬が加えられるなどし
「カレー鍋混入時に含まれていた元素の組成比や成分比、
濃度比をそのまま反映しているとみることはできない」と指摘。
元素や濃度の違いから、紙コップと死刑囚宅のヒ素が異なるとすることは適切でない」とした。

しかしながら、これは遊馬の個人的な感想ですが、
この裁判長の理屈で行けば、証拠は常に警察側で先行検査され、
その際に試薬が加わりますので、弁護側で再鑑定しても全て適切でない、
意味のない再鑑定になってしまうのではないでしょうか。


それにしても、カレー事件発生以来、常に疑われていた夫婦が、
後生大事にそんな容器を取っておくだろうか。
隠し場所も、台所の物入れでは、見つけてくださいと言わんばかりというのも、
正直、あり得ないように感じるのですが、いかがなものでしょうか。

詳細は、以下。





重要な目撃証言が法廷で証言されなかった謎

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真須美の別件逮捕の5日後、「事件当日、真須美が紙コップを持って、
カレーを調理しているガレージに入っていくところを見た」という16歳の少年が現れた。
その後少年は、和歌山市内の眼科で視力検査を受けさせられた。
何しろ彼は、20メートル離れた場所から、真須美が重ねて持っていた紙コップの色を
「外側がピンク、青、黄色の順番」と見分けることができたということになっているのだ。

少年は、インタビューの最後を「カレー事件では四人が亡くなり、
アルバイト先の関係者もカレーを食べて入院した。
いろいろ考え、これは許せんと思い、全部しゃべりました」と締めくくっている。
被害に遭った人たちのために話したのであれば、公判でも証言すべきだろう。
なぜ彼は消えてしまったのか。

半年後、カレー事件の第一審初公判が開かれる直前の『週刊文春』は、
「司法記者」の弁として少年の目撃証言についてこう記している。

「彼は複数のTVに出て証言しましたが、そこで語っている目撃時刻、
紙コップの色、真須美の動作などが、調書と微妙に食い違っている。
弁護団はここを突いて争ってきますよ」

実際には、「崩される」どころか目撃者自体が消えてしまったのだが、
それでも「疑わしきは罰せずの原則」は適用されず、死刑判決が下されるのである。









林眞須美死刑囚の長男が綴る「冤罪」の可能性とその後の人生

事件翌日、ニュースを見ながら父が、
「これは、あれやな。あの犬を殺ったヤツが犯人やな」
と言っていたのを覚えている。
ぼくら家族が引っ越してきてしばらくしてから、
昔からの地主だという近所のSさんがうちに来て父と世間話をしているとき、こんなことを言っていた。
「林さん、あんたえらいところに引っ越してきたな。ここらは物騒なことが多いんやで。
あんたら越してくる前に、この辺の飼い犬が何十匹も毒殺されてるんよ。
あんたの家の裏の畑に毒がまかれて、1年間使われんこともあったんよ」
 父は、Sさんから聞いた、この犬の毒殺事件とカレー事件を結びつけたのだ。
もちろんこの時点では、父にとってカレー事件は他人事にすぎなかった。


(長男は)何人かの女性との交際を経て、
本気で結婚したいと思う相手と出会う。
その女性は、"「父が前科者で、母は死刑囚」の施設育ち"という過去を受け入れてくれた。
結婚が具体的になり、先方の父親が「ご両親のお墓にもお参りしないといかんね」
と言いながらビールを注いでくれたとき、著者は真実を明かすことを決意する。
それ以上のウソをつくことはできないという思いからのことだった。
「お父さんはぼくを受け入れてくれるのではないだろうか?」という淡い期待もあった。
しかしその期待は、お父さんの次のひと言で木端微塵にくだかれた。
「大事な娘を死刑囚の息子にやれるか!」
お父さんの怒号を聞いて、台所にいた彼女が驚いてすっ飛んできた。
「どうして言ったの!?」と問う彼女の目は、怒りに満ちていた。
お父さんは言葉の限りを尽くしてぼくをののしった。
ぼくはお父さんの罵声を浴びながら、彼女の家をあとにした。
お父さんも、彼女も追いかけては来なかった











上記の2つの記事を目を通すだけでも、ドラマ化された「テセウスの船」と
重なってきてしまいます。

<テセウスの船のあらすじ>
1989年6月24日、北海道・音臼村の小学校で、児童含む21人が毒殺された。
逮捕されたのは、村の警察官だった佐野文吾。
28年後、佐野の息子・田村心は、死刑判決を受けてなお一貫して無罪を主張する父親に
冤罪の可能性を感じ、独自に調査を始める。事件現場を訪れた心は、
突如発生した濃霧に包まれ、気付くと1989年にタイムスリップしていた。
時空を超えて「真実」と対峙するという話。

ドラマもサスペンスとして良く出来ていましたし、
漫画の方も是非読んでみたいなと思っています。





というわけで、今回の記事で興味を持たれた方は、
この事件に係る2冊の書籍をぜひお読みになられると良いと思います。
まずは田中ひかるさんの書籍。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

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次が、林死刑囚の長男の書籍。





とにかく読めば読むほど、
色々な疑問が残らざるを得ない事件というのが、
この和歌山カレー事件ですので。






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by asmars | 2021-07-25 19:34 | 時事ネタ雑感 | Comments(0)

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